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中学受験算数と中学数学の両方のノートを見比べる中学生のイラスト

学校の数学と受験数学は別物|中学受験算数からの切り替え

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こんにちは。e!センセイ塾長の松尾です。「中学受験算数が得意だったのに、中学に上がったら数学で詰まりました」「学校の数学はできるのに、模試になると全然取れません」——保護者の方から本当によくいただくご相談です。今日は、中学受験算数・学校数学・受験数学という3つの『数学』が、実はそれぞれ別の競技だ、というお話をさせてください。20年の現場で数学を教えてきて、ここを切り分けるかどうかでお子さまの伸び方が大きく変わると実感しています。

結論:『数学』には3つの別競技がある

先に結論をお伝えします。世間で『数学』と一括りにされているものは、実は中学受験算数・学校数学・受験数学(高校受験・大学受験)の3つの別競技です。同じ「数式」と「図形」を扱っていても、要求される力・問われ方・学び方が違います。

この切り分けを知らないと、3つの場面それぞれで「前に得意だったのに、なぜ詰まる?」「前は苦手だったのに、なぜ伸びる?」という見えない罠にハマります。逆に、3つを別物として向き合えば、前の競技の結果に縛られず、今の競技で勝てる方法が見えてきます。

この記事ではまず3つの違いを表で整理し、中学受験算数の「魔法」から抜け出す方法、中学数学で立ち直る道筋、最後に高校・大学受験の数学への接続まで、順に解説します。

中学受験算数・学校数学・受験数学の3つの違いを表すイラスト

3つの『数学』の違い

まず、3つの数学の違いを一覧で見ていただきます。

観点中学受験算数学校数学(中・高)受験数学(高受・大受)
道具図・表・特殊算・比文字式・方程式・関数全範囲+応用・融合
主な力ひらめき・パターン認識計算力・正確な処理計算力+戦略・時間配分
問題の解き方答えへの道が複数解法ルートがほぼ一意複数解法から最短を選ぶ
評価1問の重みが大きい教科書範囲の到達度限られた時間内での総合点
対象年齢小4〜小6中1〜高3中3直前・高3直前

※ 中学受験算数は『脳の発達による個人差が大きい』領域です。割合・分数・比のような抽象概念は、小5〜中2あたりで腑に落ちるタイミングに個人差があります。私自身、小学校時代は中学受験算数の難問が全く解けませんでしたが、中学からの数学は6年間ほとんど苦労しませんでした。

もう少し詳しく、それぞれの特徴と、3つの違いがもたらす落とし穴を見ていきましょう。

中学受験算数の『魔法』から抜け出す

中学受験算数の特徴は、文字式(x、y)を使わずに、図・表・比で答えに辿り着くところにあります。クモワ(くらべる・もとにする・割合)・キハジ(距離・速さ・時間)のような『公式』を覚えて、数字を当てはめるだけで解けてしまう問題も多いです。

私が以前、転塾してきた小6のお子さまを担当したときのことです。割合の問題を解いてもらうと、問題文を読まずに「〜が」を探して数字を当てはめるだけの解き方をしていました。前の塾の先生(大学生)がクモワ公式で教えていたためです。「算数は魔法」と思い込み、ひたすら『魔法の伝授』を待っている状態でした。私が現場でいちばん怖いと感じる症状です。

中学受験算数の落とし穴は、公式を当てはめれば解ける『気持ちよさ』があるため、考えることをやめてしまうことです。私の同僚は「算数を魔術と思っている子は伸びない」と表現しています。実際の数学は、ゴチャゴチャと試行錯誤しながら式に辿り着くものです。模範解答に書かれない「途中の試行錯誤」を、塾や家庭教師がきちんと見せてあげる必要があります。

「魔法」から抜け出すサインは、お子さまが問題文を読んで『どこを聞かれているか』を自分の言葉で説明できること。これができるようになったお子さまは、中学に入ってからの数学でも問題なく走れます。

中学数学で立ち直る道筋

中学受験算数で結果が出なかったお子さまも、中学数学で挽回できる可能性は十分にあります。むしろ、中学からの数学は学校数学=計算力で大きく決まる世界なので、努力次第で順位が大きく動きます。

立ち直りの鍵は、中1の計算量を確保すること。文字式・方程式だけで1万〜3万問という量を投下することで、中学受験算数で躓いたお子さまでも、中学数学では難なく走れるようになります。詳しい立て直しの順番は 中学数学3年間の地図|詰まる順と立て直し方 をご覧ください。

中学受験で『深海魚』と呼ばれる、中学受験で入って成績低迷したお子さまが、私の指導現場では1対1の個別指導でいちばん楽に伸びるパターンです。計算等の基礎学力・書ける漢字量が段違いに高く、宿題をこなす耐性もあるためです。「子供の時に培った苦労は、必ず役に立ってくる」と現場で何度も感じてきました。

中学受験算数から中学数学への切り替えを表すイラスト

高校受験・大学受験 数学への接続

学校数学が安定してきたら、次は受験数学(高校受験・大学受験)への接続を見据えてください。学校数学と受験数学も、実は別の競技です。

高校受験 数学|地域差・問題傾向の差が大きい

公立高校入試と私立高校入試で、出題傾向と難易度が大きく違います。私立難関校では中学範囲を逸脱した『発展問題』が出ますし、公立では標準問題を時間内に処理できる『速さ』が問われます。志望校の過去問を中3の夏前に1度解いて、何が足りないかを冷静に見極めるのが鉄則です。

大学受験 数学|共通テストと2次は別競技

共通テストの数学は資料・文章・誘導が長く、読む速度と処理量が問われるテストです。2022年度の数ⅠA平均点は30点台と難易度調整ミスが起こったほどで、共通テストと2次の数学は『別競技』と考えてください。共通テストで失敗しても2次で逆転は十分可能です。

高校受験 → 大学受験 数学の橋渡し

高校で数学が崩れる原因は、中学数学の理解が『公式当てはめ』止まりだったところにあります。「なぜこの公式が成り立つか」を一度でも導出できる経験を、中3のうちに積んでおくことが、高校数学を支える土台になります。中3で二次方程式の解の公式を扱うときに、その導出(平方完成)まで踏み込んでもらえる先生に出会えるかは、3年先の数学を左右します。

気をつけたい失敗パターン3つ

3つの数学を切り分けないことで起きる失敗パターンを、3つお伝えします。

① 「受験算数が苦手=数学も苦手」と決めつける

中学受験算数で結果が出なかったお子さまの中には、中学から始まる数学であっという間に伸びるお子さまが一定数います。「中学受験算数 = 数学のセンス」ではないことを、保護者の方も覚えておいてください。

② 「学校数学が満点だから受験数学も大丈夫」と思い込む

学校の定期テストで90点・100点を取り続けているお子さまでも、模試になると半分も取れないことがあります。学校数学と受験数学は、量・速さ・応用度が全く違うためです。志望校の過去問を1度解いてみて、現在地を測ることが重要です。

③ 中学受験算数の解き方を中学数学に持ち込む

中学受験算数の『特殊算』『線分図』を中学数学にそのまま持ち込んでも、効率が悪くなる場面があります。中学数学では、文字式と方程式という強力な道具が使えるので、それを使った解き方を新しく身につけるのが正解です。「前のやり方の方が楽だから」で押し通すと、中3以降の応用問題で詰みます。

3つの数学を混同して起きる失敗パターンを表すイラスト

よくある質問

Q. 中学受験算数が得意だったので、中学数学も安泰ですよね?

A. 必ずしも安泰ではありません。中学受験算数の『ひらめき』『パターン認識』と、中学数学の『文字式・方程式の処理力』は別の力です。中学受験で図と比で解いていたお子さまが、中学から文字式に切り替えるのに違和感を覚えることもあります。中1の計算問題集を1冊終わらせて、中学数学の作法に慣れるのがおすすめです。

Q. 中学受験算数で苦戦しています。中学に上がってから挽回できますか?

A. 十分に挽回できます。中学からの数学は、計算量で大きく決まる世界です。中1の文字式・方程式に集中投下することで、中学受験で苦しんだお子さまでも、定期テストで好成績を取れるようになるケースを何件も見てきました。私自身、小学校時代は中学受験算数の難問が全く解けませんでしたが、中学からの数学は6年間ほとんど苦労した記憶がありません。

Q. 学校の数学は得意なのに、模試だと点が取れません。

A. 学校数学と受験数学は、量・速さ・応用度が違うためです。学校の定期テストは『教科書範囲の到達度』を測りますが、模試は『限られた時間内での総合点』を測ります。志望校レベルの過去問を1度解いて、何が足りないかを具体的に把握することをおすすめします。塾や家庭教師の先生と一緒に、模試の結果を分解して『あと何点・どの単元』を埋めるかを決めてください。

Q. 中学受験算数の特殊算(旅人算・つるかめ算)は、中学以降も使いますか?

A. 中学数学ではほとんど使いません。中学数学では、特殊算で扱う問題を文字式と方程式で解きます。逆に言えば、中学受験で特殊算を覚えた経験は、中学数学では『使わなくなる』だけで、デメリットにはなりません。「中学受験で覚えたものを中学数学にも持ち込もう」とせず、新しい道具(文字式・方程式)を素直に身につけてください。

Q. 高校数学が一気に難しくなると聞きます。中学までに何を準備すれば?

A. 中3までに「なぜこの公式が成り立つか」を導出できる経験を積んでおくことです。例えば、二次方程式の解の公式を平方完成から導出してみる、相似の証明をきちんと書ける、などの「公式の裏側を見る」習慣が、高校数学を支える土台になります。塾や家庭教師の先生に「導出も一緒にやってほしい」とリクエストしてみてください。

出典・参考

文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)算数編」「中学校学習指導要領(平成29年告示)数学編」「高等学校学習指導要領(平成30年告示)数学編」。教科の目的と到達点はこちらをご参照ください。

本文中の「3つの数学は別競技」「中学受験算数は脳の発達による個人差が大きい」「中学受験で苦戦した子も中学数学で挽回しうる」「『深海魚』は個別指導で楽に伸びる」などの判断軸は、塾長・松尾(中学・高校の数学教員免許保有)の20年の現場経験(学校教員→集団塾→個別指導→プロ家庭教師→講師育成)に基づく所見です。

e!センセイの考え

「数学が苦手」とお子さまや保護者の方がおっしゃるとき、私はまず「どの数学が苦手なのか」を確認するようにしています。中学受験算数なのか、学校数学なのか、受験数学なのか。これを切り分けるだけで、対処の方向性が全く変わるからです。

前の競技の結果に縛られず、今の競技で勝てる方法を一緒に探す——家庭教師や個別指導は、その切り分けと立て直しに最も向いた指導形態だと考えています。

e!センセイには、中学受験算数・中学数学・高校数学・大学受験数学それぞれの専門経験を持つ講師が登録しています。お住まいの地域・科目から家庭教師を探す ことができ、数学の家庭教師を個人契約で探す 専用ページや、中学数学3年間の地図中学受験で家庭教師を使うべきタイミング受験勉強はいつから始める? もあわせてご覧ください。

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