
「数学ができる子」もいきなり模範解答は浮かばない|林修先生の予習なし授業
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こんにちは。e!センセイ塾長の松尾です。「うちの子は数学の問題を前にしても、ノートに何も書かないんです。じっと問題文だけ見ています」——保護者の方との面談で、本当によくいただくお悩みです。
「数学ができる子」も、いきなり模範解答は浮かびません
数学が苦手なお子さまの多くは、「数学ができる人は、問題文を読んだ瞬間に模範解答どおりの式が頭に浮かんでいる」と誤解しています。だから自分も同じように、いきなり正しい式を書かなければと思ってしまい、何も書けずにフリーズしてしまうのです。
しかし実際は逆です。数学ができる人ほど、答案には書かない「ゴチャゴチャ」を裏で大量に動かしてから、最終的に整った式に着地しています。この記事では、その理由と、お子さまが「手を動かせる子」になるための家庭での関わり方をお伝えします。
元になった話:林修先生の「予習なし授業」
私がこのテーマを強く意識するようになったのは、東進ハイスクールの林修先生がご自身の若い頃のエピソードとして語っておられた、ある授業の話でした。私自身もこのエピソードについて以下のように発信したところ、想像以上に多くの方に読んでいただきました(10万件以上の「いいね」をいただきました)。
昔、東進ハイスクールの林修先生が「もう時効なんで言えるんですけど」と前置きした上でされていた興味深い話。 林修先生がまだ数学の先生だった頃、ある日の授業の予習をしていないことを、その授業の直前に気がついたそうです。その日は東大の過去問を解説する回だったそ
塾長・松尾のXより
林修先生の本意はもちろん「準備しない方がよい」という話ではないはずです。それでもこのエピソードには、数学を勉強する上での重要なエッセンスが詰まっていると、私は20年間の指導経験から強く感じています。
なぜ「答案に書かないゴチャゴチャ」が本当の数学力なのか
数学が解ける人のリアルな動きは、模範解答が示すような直線的なものではありません。問題文を読み、図や表を描き、別の解法を試し、行き止まりに気づいてやり直す——この「答案には書かない試行錯誤」こそが、本当の数学力の正体です。
林修先生の「予習なし授業」が分かりやすいと評判だったのも、まさにこの部分が見えたからだと考えています。整った模範解答だけを見せられても、生徒は「自分もこういう式をいきなり思いつかなければ」と感じてしまい、再現できません。一方で試行錯誤の過程まで見えると、「自分も手を動かしてみればたどり着けるかもしれない」と感じられるのです。
実際の指導現場でも、伸びる生徒のノートには、最終的な答えとは関係のない図や、消した式の跡がたくさん残っています。逆に伸び悩んでいる生徒のノートは、問題と答えだけが書かれていて、途中の試行錯誤の痕跡がほぼゼロです。同じ点数のお子さまでも、ノートを見れば伸びしろは一目で分かります。

手が動かない子が抱えている3つの誤解
ノートに何も書かない子は、怠けているわけでもセンスがないわけでもありません。多くの場合、次のような誤解を抱えています。
誤解1:正しい式を一発で書かないといけない
模範解答が「問題文 → いきなり整った式」の形で書かれているため、その通りに書かなければ間違いだと思ってしまいます。途中で消す前提の試し書きをしてよい、という発想がそもそもありません。
誤解2:図や表は「できる人」が描くもの
本当は逆で、図や表を描くから問題が見えてきます。「分かってから図を描く」のではなく、「描きながら分かっていく」のが本来の使い方です。
誤解3:解けない=勉強不足、で止まる
解けないときに必要なのは「手を動かして可能性を試すこと」ですが、解けない=自分の知識不足という結論で止まり、参考書を眺めるだけで終わってしまいます。
家庭で「手を動かす習慣」を取り戻す3つの声かけ
ご家庭でできる最大のサポートは、「正解を出したこと」ではなく「手を動かしたこと自体」を評価することです。具体的には、次の3つの声かけが効きます。
ひとつ目は「合ってる?」ではなく「図、描いてみた?」と聞くこと。ノートに問題と答えしか書かれていなければ、まずは問題文の隣に小さな図や数直線を描くところから始めてもらいます。最初は不格好で構いません。
ふたつ目は、消しゴムで途中式をすぐ消してしまう子に「間違えた式は二重線で消すだけにして、ノートに残しておこう」と伝えること。残った間違いの跡が、後で見返したときの最大の学習素材になります。きれいなノート信仰の弊害については東大生のノートは美しいもあわせてご覧ください。
みっつ目は、解けた問題でも「どうしてその式にしたの?」と一言聞くこと。答えが合っているのに説明できない場合、数字を雰囲気で掛けたり割ったりしているだけのことがよくあります。説明させるだけで、本人が自分の手の動かし方を意識するようになります。
なお、これらの土台として欠かせないのは計算の確かさです。手を動かそうにも計算負荷が高すぎると、試行錯誤までたどり着けません。詳しくは数学(算数)はまず計算力からで、文章題で特に手が止まるお子さまには算数(数学)の文章題が苦手な生徒の共通点もあわせてお読みください。

よくある質問
Q. ノートが汚くなることを子どもが嫌がります。きれいな方が成績は上がりませんか?
A. 見やすいノートを「最終的な提出物」として整えるのは良いことですが、問題を考えている最中のノートは多少散らかっていて当然です。私の経験では、伸びている生徒の方が考え中のノートはむしろ雑で、図や試行錯誤の跡が多く残っています。きれいなノートを目的化すると、考える前にレイアウトを気にしてしまい、肝心の試行錯誤が止まってしまうこともあります。
Q. 図を描く習慣がついていません。どこから始めればよいですか?
A. 学年を1〜2年下げた問題集で、図形・速さ・割合の文章題から始めてみてください。問題文を読みながら、登場する人や物を「丸と矢印」だけで描くところからで十分です。最初は描き方を親御さんが横で一緒に試して構いません。「描けばわかる」という感覚を一度掴めば、自分から描くようになります。
Q. 模範解答どおりに書けないと、テストで部分点はもらえないのでは?
A. 答案として清書する段階では、もちろん模範解答に近い書き方が望ましいです。大切なのは、清書の前の試行錯誤を裏でしっかりやっているかどうか。普段の問題演習で考える過程を持っている子は、本番でも整った答案が書けるようになります。逆に普段から「正解だけ書く」練習しかしていないと、少しひねった問題が出た時に手が止まってしまいます。
出典・参考
本記事冒頭で紹介した林修先生のエピソードは、塾長・松尾本人のX投稿を出典としています。林修先生ご本人が公にされたインタビュー時期・媒体は特定できておりません。記事化にあたり、伝聞であることを明示しています。
e!センセイの考え
数学が伸び悩むお子さまに足りていないのは、才能ではなく「手を動かしながら考える経験」です。横に座って一緒に図を描いてくれる大人が一人いるだけで、この経験は急に積み上がります。
e!センセイには、解き方の答えだけでなく、考え方の試行錯誤まで一緒に手を動かしてくれる家庭教師が登録しています。数学を見てくれる家庭教師を探すことができ、数学の家庭教師を個人契約で探す 専用ページもあわせてご覧ください。

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